まず、相手が動かした駒を見る

自分の手番になると、つい「何を攻めよう」と考えたくなります。その前に、相手が今動かした駒を見てみましょう。その駒は、次にどこへ動けるでしょうか。自分の玉や飛車、角が、その先にありませんか。

駒の働きが届く範囲を「利き」といいます。歩なら一つ前、角なら斜めの線。飛車・角・香の利きは、途中に駒があればそこで止まります。駒の動かし方を覚えるときは「どこへ動けるか」を見ますが、対局では同じ知識を「何を取られそうか」を見つけるために使います。

動いた駒の跡にも目を向けます。そこが空いたことで、奥にいた飛車や角の道が通ることもあります。相手の一手で変わった場所を探すと、盤全体を一度に理解しようとするより、考える入口を見つけやすくなります。

参照:[1]

取り返せる駒でも、損をすることがある

味方の駒で取り返せるようにしておくことを、「ひもをつける」といいます。駒を一枚で前へ出すより、仲間の支えがある方が安心です。ただし、支えがあれば何を取られてもよい、というわけではありません。

角で支えられている銀

5五の銀を8八の角が支えています。矢印は後手の歩と先手の角の利き。説明に必要な駒だけを置いた部分図です。

図では、相手の5四の歩が5五の銀を取れます。角でその歩を取り返しても、自分は銀を一枚失い、得るのは歩一枚です。取り返せることと、損をしないことは別だと分かります。

指す前に「取られたら何で取り返すか」「そのあと何が残るか」と、頭の中で一往復だけでも考えてみてください。実戦では、駒を渡して強い攻めを得ることもあります。最初はまず、知らないうちに駒を失う場面を減らすことを目標にしましょう。

参照:[1][2]

攻めたいときほど、玉の居場所を確かめる

飛車や角が活躍すると、次々に攻めたくなります。けれど、こちらの玉に王手がかかれば、まずその王手を解かなければなりません。思い描いていた攻めを続けられず、受けに回ることもあります。

そこで、戦いが本格化する前に玉を安全な場所へ移し、金銀で守りを作ります。これが「囲い」です。形の名前より先に、玉をどの駒が守り、どちらから攻められそうかを見てみましょう。

最初は、自分が試す戦法と一緒に囲いを一つ学ぶのがおすすめです。たとえば、相手が居飛車のときに四間飛車を指すなら、美濃囲いが学習の入口になります。ただし、相手が先に攻めてきたら対応が必要です。王手は必ず解かなければならず、取られそうな駒を放っておけば損をします。

参照:[3][1]

攻めは、仲間を一枚増やすところから

玉が少し落ち着いたら、攻める場所を考えます。相手の陣地へ一枚だけ飛び込むより、同じ場所に二枚の駒を働かせることを意識してみましょう。

たとえば、飛車の前へ銀を進める棒銀は、飛車と銀を協力させて突破を目指す攻めです。歩も、相手の駒を動かしたり、取り合いを始めたりする役目を持ちます。飛車や角だけで戦うのではなく、歩を含めたつながりを見ると、一手の目的が分かってきます。

ここで役立つのが「手筋」です。よく現れる局面で使える、駒の働かせ方の工夫を指します。一つ学んだら、成功する手順に加えて、相手が取らない場合や、別の駒で受ける場合も確認しましょう。形が似ていても、周りの駒や持ち駒が違えば同じ結果になるとは限りません。

参照:[2][5]

王手をかけることと、詰ませることの間

王手をかけたのに玉に逃げられる。駒をたくさん取ったのに、先に自分の玉が詰んでしまう。こうした場面は、「王手」と「詰み」の違いを確かめる機会になります。

王手をかけられた側は、玉を逃がす、王手している駒を取る、間に駒を入れる、といった方法を調べます。どれでも王手を解けない状態が詰みです。間に駒を入れる方法は、飛車・角・香・竜・馬が離れた位置からかける王手に使えることがありますが、桂の王手などには使えません。

詰みの形に慣れるには、まず一手詰のような短い問題から試してみてください。答えの一手を当てたあとに、「玉に逃げ道がないか」「王手している駒を取れないか」「間に駒を入れて防げないか」まで確かめると、駒の利きを読む練習になります。解けないときは答えを見て、逃げ道がどう塞がっているかを盤上で確認しても構いません。

詰将棋は、王手を続けて詰ませる練習です。実戦では王手以外の手も選べます。詰将棋で玉の捕まえ方を学びながら、対局では自分の玉の安全も合わせて考えていきましょう。

参照:[3][4]

定跡は、一手の理由を考えながら読む

序盤の指し方に見通しが欲しくなったら、定跡の教材を一つ開いてみましょう。定跡(じょうせき)は、よく現れる局面で研究されてきた指し方です。長い手順を最初から全部覚えようとするより、一手ごとに「何を守ったのか」「何を準備したのか」を考えてみます。

たとえば、銀を上がる手でも、攻めに参加するための場合と、角を守るための場合があります。動いた場所だけを記憶するより、目的も一緒に言葉にすると、相手が違う手を指したときに考える材料が残ります。

知らない応手が現れたら、その先の手順を無理に再現しなくて大丈夫です。相手の利き、駒の取り合い、玉の安全へ戻って考えます。教材は、その確認をするときに戻れる場所として使ってください。

一局が終わったら、一場面だけ戻ってみる

負けた直後には、「全部悪かった」と感じるかもしれません。けれど、全部を直そうとすると、次に何をすればよいかが曖昧になります。取られて驚いた駒、攻めが止まった場所、玉が急に危なくなった瞬間。まず一場面だけ選んで戻ってみましょう。

対局のあとに相手と指し手を振り返り、考えを伝え合うのが感想戦です。「このとき何を狙っていましたか」と聞くと、自分には見えていなかった狙いに気づくことがあります。ひとりで振り返るときも、その場面で考えていたことと、見落としていたことを短く書き留めてみましょう。次の一局で何を見るかが具体的になります。

「今日は指す前に、相手の角の利きを見る」。次の目標は、このくらい小さくてもよいのです。学んだことを一つ試し、気になったところへ戻る。その往復の中で、盤上に見えるものを増やしていきましょう。

参照:[6]