格言
格言を知るだけでなく、どんな場面で役立つかを盤面で確かめましょう。21の格言を、取り返しや逃げた後まで進められる短い例で紹介します。
9×9の部分図です。説明に関係する駒だけを置き、記載した持ち駒で考えます。矢印は開始図では狙いや利き、進めた図では直前の移動を示します。格言は考え方の目安で、どの局面でも成立するわけではありません。
駒組み・守り
玉の守りは金銀三枚
後手番。横から来た飛車に対して、金同士の支えを確認。
金銀三枚を玉の近くでつなげます。図では4九金が5八金を支え、3八銀と4九金も互いに守り合っています。
△5八飛成 → ▲同金
先手は金一枚と引き換えに飛車を得ました。守り駒がつながっていると、相手は金を取るだけでは突破できません。
三枚をただ近くに置くだけでなく、取られた駒を取り返せる関係が大切です。図の△5八飛成は、その支えを見落とした例です。
駒組み・攻め
攻めは飛角銀桂
先手番。2三へ桂を跳ね、銀、飛車と続く攻め。
桂・銀で攻め、後ろの飛車が続き、角が支えます。2三へ順に取り返す一例で、四種類の駒の連携を見てみましょう。
▲2三桂成 → △同金 → ▲同銀成 → △同銀 → ▲同飛成
この応手の順では、先手は桂を失う代わりに金と歩を得て、角に支えられた龍も作れます。駒が順番につながる攻めの例です。
最後に2三へ成った飛車も5六角に支えられています。四種類をそろえることより、先に動く駒の後ろへ次の駒が続けるかが大切です。「遊び駒は活用せよ」も、攻めや守りに参加していない駒へ役割を与える教えです。
駒の使い方・金銀の役割
攻めは銀、受けは金
せめはぎん、うけはきん
先手番。持ち銀を5四へ打つと、斜め後ろの金と飛車を狙えます。
斜めへ進退できる銀は攻めに、横にも利く金は玉のそばの受けによく働きます。銀で二枚を狙う図と、金を玉に寄せて受ける図を見てみましょう。
銀で斜め後ろを狙う
▲5四銀 → △6二飛 → ▲4五銀
この順では銀の利きで金を取れます。飛車が金を守って逃げる場合は、銀と金の交換になります。
金を玉のそばへ置く
▲3八金 → △同飛成 → ▲同玉
この取り方なら、金と引き換えに飛車を得ます。受け駒を置くときも、取られた後を確認します。
銀を守りに、金を寄せに使うこともあります。役割を固定する教えではなく、その局面で駒の利きを生かすための目安です。
序盤・玉と攻め駒の距離
玉飛接近すべからず
ぎょくひせっきんすべからず
後手番。持ち桂を3六へ打つと、近くにいる玉と飛車を同時に狙えます。
飛車の近くでは、飛車への攻めが玉への王手にもなりやすくなります。図では△3六桂が王手飛車取り。同じ飛車の位置でも、玉が離れていれば王手にならず、飛車を逃がせます。
近いと王手飛車取り
△3六桂 → ▲5七玉 → △2八桂成
玉のどの逃げ方でも2八への桂跳びが残ります。桂と飛車の交換になっても、飛車を失う両取りです。
離れていれば飛車を逃がせる
△3六桂 → ▲2六飛
同じ桂打ちでも、玉と飛車を同時には狙われません。玉の位置が、飛車への対応に使える手を変えています。
離すだけで安全になるとは限らず、相手の利きと囲いも確認します。「居玉は避けよ」も、戦いの前に玉の安全を整える教えです。戦法に応じて、玉と飛車の位置を考えましょう。
持ち駒・歩の使い方
歩のない将棋は負け将棋
先手番。9九玉への王手。8八は後手の銀が押さえています。
図の9九玉は横から飛車の王手を受け、8八は後手の銀が押さえています。持ち駒がなければ、逃げる・取る・合駒する、のどれもできず詰みです。歩が一枚あれば、▲8九歩で飛車の利きを止められます。
歩が一枚あれば
▲8九歩 → △同飛成 → ▲同玉
歩を合駒に使えば、この王手は詰みになりません。図の取り方なら玉で飛車を取り返せます。
歩がないと
持ち駒がなく合駒できません。8九は飛車の利き、8八は銀の利き、9八は自分の香で塞がり、9九玉は詰みです。
小さな歩一枚が、負けを防ぐ受けの手になる例です。△同飛成と取られても▲同玉と飛車を取れます。歩を持たないだけで常に負け、という意味ではありません。
受け・駒の支え
金底の歩、岩より堅し
後手番。金を取った飛車を、底歩で取り返せるか。
金の真下に歩があれば、金を取る大駒を歩で取り返せます。図では5八金が2八飛に狙われていますが、△5八飛成の王手にも▲同歩で受けられます。
底歩がある
△5八飛成 → ▲同歩
先手は金と引き換えに飛車を得ます。5九の一歩が、金を取られても崩れない支えになっています。
底歩がない
△5八飛成 → ▲7九玉
取り返す歩がないため、この順では金を失って龍を残します。底歩がある図との違いです。
歩がない図では、5八の龍が2五角に守られ、玉では取り返せません。支えの歩があるかどうかで、同じ金取りへの対応が変わります。
攻め・角の弱点
角の頭は丸い
先手番。4八飛が4六歩を支えています。矢印は歩を突く狙いです。
角は目の前の駒を取れません。図では飛車に支えられた歩を4五へ突き、4四の角を狙います。
▲4五歩 → △3三角 → ▲4四歩
歩で角を追い、飛車に支えられた歩を4四へ進めました。角の正面の弱点を利用する例です。
初めは4六歩が飛車の前にいるため、飛車で角を直接取ることはできません。角が逃げずに別の手を指せば▲4四歩。角を引いた後の歩も飛車で支えられます。
受け・香の長い利き
下段の香に力あり
先手番。5九香で5七金を下から支えます。矢印は香の利きと、後手飛車の狙いです。
香は前方へ長く利くので、自陣の低い位置から味方の駒を支えられます。図の▲5九香は、2七飛に狙われた5七金の後ろに香を置く受けです。
▲5九香 → △5七飛成 → ▲同香
後手が金を取るこの手順では、先手は金を失う代わりに飛車を得ます。香を下段に置くことで、飛車による金の取り込みに備えられます。
香が前へ出すぎると、その後ろにある駒は守れません。味方の駒を後方から支え、その駒が動いた後には縦の利きが通る位置を考えます。途中に相手の合駒が入る場合も確認しましょう。
攻め・桂の使い方
桂の高跳び歩の餌食
先手番。4二の金1枚が、桂の跳び先の3三・5三を守っています。
桂は後ろへ戻れません。歩で追われたときに、安全な跳び先がなければ捕まります。
▲4五桂 → △4四歩 → ▲3三桂成 → △同金
前へ逃げても金に取られ、桂一枚を失いました。
桂を助けず別の手を指せば、△4五歩で取られます。5三へ跳ねても4二金に取られるので、跳ねる前に次の行き先まで確かめましょう。
受け・桂への対抗
桂先の銀、定跡なり
後手番。桂の二つの跳び先を、7四銀が押さえる。
桂の一つ前に銀を置くと、桂そのものと二つの跳び先をまとめて狙えます。図の7四銀は、7三の桂にも当たっています。
△8五桂 → ▲同銀
8五への跳ね出しは銀で取れます。
桂が動かなければ▲7三銀で取れます。6五・8五のどちらへ跳ねても銀で取れる形です。ただし、相手の歩などで銀を追われないかも確認しましょう。
駒の活用・銀
銀は千鳥に使え
先手番。斜めに出ておけば、歩で追われても戻れる。
銀は斜めに出ると、元の場所へ引き返せます。▲4六銀と出て歩に追われても、▲5七銀と戻れます。
▲4六銀 → △4五歩 → ▲5七銀
斜めに進んだ道を引き返し、歩の攻撃をかわしました。
まっすぐ▲5六銀と出ると、5七へは戻れません。出る前に引き場所を残すのが「千鳥」の考え方です。
受け・金の配置
金は引く手に好手あり
先手番。4五銀に狙われた金を引き、6七銀を守ります。矢印は移動先と、引いた後の利きです。
金は斜め後ろへ利きません。▲5七金と一つ引くと、5六からは守れなかった6七銀を横から支えられます。
▲5七金 → △6七飛成 → ▲同金
銀を取った飛車を、引いた金で取り返せました。この順では銀と飛車の交換です。
引いた金は5八飛とも支え合います。引くこと自体より、どの駒を守れるようになるかが大切です。
攻め・成り駒
と金は金と同じで金以上
先手番。と金で守りの金を取り、取り返された後の持ち駒を比べる。
と金は金と同じ動きで相手の守りを攻められます。図では4二金を取り、△同銀と取り返されても、相手に渡るのは元の歩です。「と金の遅早」は、歩を成って近づくまで手数がかかっても、守りに届くと攻めが速くなることを表します。
と金で交換する
▲4二と → △同銀
先手の持ち駒は金、後手の持ち駒は歩。相手の金と、元は歩だった駒を交換できました。
金で交換すると
▲4二金 → △同銀
こちらは双方が金を持ち、金同士の交換です。と金の例では相手へ渡す駒を歩に抑えられました。
本物の金で同じ交換をすると、相手も金を持ち駒にします。安い歩を強い駒として使い、取られても金を渡さない点が、と金の価値です。
受け・馬の働き
馬は自陣に引け
先手番。6七へ引いて6八金を守れるか、馬と角を比べます。
馬は角の利きに、縦横一マスの動きが加わります。▲6七馬と引けば、角のままでは守れない6八金を支えられます。
馬なら縦にも取り返せる
▲6七馬 → △6八飛成 → ▲同馬 → △同角成 → ▲同玉
この取り合いでは互いの角を交換し、先手は金を失う代わりに飛車を得ます。馬の縦の利きが、龍を取るための一手を作っています。
角のままでは守れない
▲6七角 → △6八飛成 → ▲8九玉
▲8九玉まで、後手は金を一枚得て、6八の龍も残ります。角では6八へ動けず、馬のようには取り返せません。
6八は2四角も狙っているため、金を取った龍を玉では取れません。馬で取り返す一手が、守りの違いになります。
攻め・飛車の打ち場所
大駒は離して打て
先手番。持ち飛車を2二に打つ場合と、4二に打つ場合を比較します。矢印は2二飛の王手の線と、3三銀の利きです。
大駒は、相手の金銀にすぐ取られない場所へ打ちます。▲2二飛と離して打つ場合と、金に近い▲4二飛の場合を比べます。
離して打ってから成る
▲2二飛 → △4二金 → ▲同飛成 → △6一玉
この合駒の順では、先手は金を取り、銀に守られた龍も作れます。最初に離して打つことで、飛車を残したまま次の手を指せます。
近くに打つと金で取られる
▲4二飛 → △同金 → ▲同銀成 → △同玉
最後まで取り合うこの順では、先手は金を得る代わりに飛車と銀を失います。3三銀の支えがあっても、飛車から先に取られる打ち場所では交換の収支が変わります。
遠くからなら、相手の応手を見てから近づけます。図は△4二金と受ける場合の比較で、離して打てば必ず成功するわけではありません。
受け・相手の大駒に当てる
大駒は近づけて受けよ
おおごまはちかづけてうけよ
先手番。5五角からの王手を受けています。持ち駒は歩と銀です。
遠くの大駒を歩で呼び込み、次の合駒を大駒取りにする受けです。図では角を4六へ近づけてから▲3七銀と打ち、王手を防ぎながら角を狙います。
▲4六歩 → △同角 → ▲3七銀
王手を防ぎながら角取りにしました。角を逃がすなどの対応が必要になり、受けだけで終わらないのがこの順の効果です。
初めから▲3七銀と受けても王手は防げますが、5五角には当たりません。歩を取らせると銀の利きに角が入り、相手にも対応を求められます。近づけて自玉が危険にならないかは確認しましょう。
中終盤・駒得より厳しい手を探す
両取り逃げるべからず
りょうどりにげるべからず
先手番。5五桂が4七飛・6七金を両取り。1二には2三銀が利いています。
両取りをかけられても、相手は一度に二枚を取れません。どちらかを逃がす前に、それ以上に厳しい手がないか探します。図では飛車と金の両取りを受けていますが、相手玉を詰ませられます。
▲1二金
飛車も金も逃がす必要はありませんでした。両取りへの対応を決める前に、相手玉への詰みを確認します。
「いつでも両取りを放置してよい」という意味ではありません。王手には必ず応じます。詰みや有力な反撃がなければ、大切な駒を逃がす判断も必要です。
終盤・玉の逃げ方
玉の早逃げ八手の得
先手番。△2九飛成の王手が来る前に、上へ逃げたい。
王手の前に▲1七玉と逃げれば、△2九飛成は王手になりません。もう一手の▲2六玉で上へ逃げられます。
先に玉を逃がす
▲1七玉 → △2九飛成 → ▲2六玉
同じ攻めに対し、玉は2六まで逃げられました。王手を待たなかった一手が、上部への移動を助けます。
後手番の比較:玉が2八のまま
△2九飛成 → ▲1七玉
玉はまだ1七で、次は後手の手番です。先に逃げた例のように、すぐ2六まで進む余裕がありません。
比較図は同じ駒配置の後手番です。早逃げの機会を使わないと、△2九飛成への応手に▲1七玉と指し、2六へ進む一手が足りません。「八手」は大きな得を表す言い方です。上部の安全なマスを目指す発想は「中段玉は寄せにくし」にもつながります。
終盤・寄せ方
王手は追う手
先手番。矢印は2三の金を飛車で支える利き。3二には飛車の利きがありません。
王手を続けるだけでは寄せになりません。図の▲2三金は飛車に守られていますが、続く▲3二金には支えがなく、玉に取られてしまいます。
▲2三金 → △4一玉 → ▲3二金 → △同玉
二度目の王手で金を渡してしまいました。王手だから相手は逃げるはず、と決めつけず、取り返しと退路を確認します。
玉が逃げる手だけを読まず、王手した駒を取られる応手も確かめます。相手の退路を塞ぎ、攻め駒どうしを支える「玉は包むように寄せよ」と併せて考えましょう。
終盤・退路を先に塞ぐ
玉は包むように寄せよ
ぎょくはつつむようによせよ
先手番。金が上への脱出を抑えています。持ち銀で3二の退路と2二への支えを整えます。
王手を急ぐ前に、逃げ道と攻め駒の支えを整えます。図では玉の横へ▲3三銀と打ち、3二への退路を塞ぎながら、次の▲2二角成を支えます。
▲3三銀
玉を追い回す前に、逃げ道を減らし、攻め駒を支えました。ここからの詰みは腹銀の手順で動かせます。
「玉の腹から銀を打て」の具体形です。先に▲2二角成と王手すると△同玉。銀を先に置けば、玉が1二・1三のどちらへ逃げても角成りで詰みます。詳しい続きは腹銀の手順で確認できます。
終盤・受けのない詰めろ
長い詰みより短い必至
ながいつみよりみじかいひっし
先手番。後手の持ち駒はありません。先に▲2二飛成では△同銀と取られます。
必至は、次の詰みを相手の受けでは防げない形です。読み切れない長い詰みを追うより、確実な必至を選ぶ考え方を示します。図では▲1三金が、次の▲2二飛成以下の詰みを受けられない形を作ります。
▲1三金 → △2二銀 → ▲同飛成
後手の合法手は銀を2二・3二・4二へ動かす三つだけで、どれにも2二への飛車成りで詰みます。金の支えを一手加えて必至にした例です。
この図では▲2二金△同銀▲同銀成の詰みもあります。即詰みを読み切ったなら、詰ませて構いません。必至を選ぶときは自玉が先に詰まないかも確認します。図では双方の玉と持ち駒を示し、後手に王手の反撃がありません。